子供を歯医者に連れて行くときのコツ~歯医者嫌いになるかどうかはママ次第?
1.歯科医院選びのポイント
子供をいざ歯科医院に連れて行こうと思っても、どこがいいのか迷ってしまうもの。子供の歯は成長過程にあり、虫歯の治療にしても単に削ってつめればいいわけではありません。現在の状態と今後の歯の成長を考え、その子にもっとも合った治療方針を立ててくれるところがよいでしょう。また子供の歯は大人に比べて虫歯になりやすいものです。予防に力を入れてくれるところなら、さらにグッドです。次のポイントを歯科医院選びのご参考になさってください。
・将来の永久歯のことを考えながら、乳歯の治療をしてくれる。
・その子の発育のペースに合わせた治療方針を立ててくれる。
・必要な場合は、治療ができるくらい発育するまで待つという考え方をしてくれる。
・子供の扱いに慣れている(泣いても気にしない、あるいは子供は泣くものと思っている)ので、治療がスムーズに行える。
2.歯医者さんに行く前に
歯医者さんに行くことが決まったら、そのことを子供に知らせて心の準備をさせてあげましょう。虫歯にかかっている場合は、虫歯の恐ろしさと治療の必要性、親では虫歯を治せないことなどをできるだけわかりやすく説明してあげましょう。怖がったり嫌がったりしているように見えても、お母さんが一生懸命説明すれば、子供なりに理解してくれるものです。こうした準備が、当日の治療をスムーズにする助けになります。お母さんの心得として、次のことがあげられます。
・日頃から歯科医院を脅し文句にしない。
子供がわがままを言ったときなどに「歯医者さんでみてもらうよ」などの脅し文 句に使っていると、歯科医院=怖いところという意識がすり込まれてしまいます。
・「痛くない」、「今日はみるだけ」などと気軽にいわない。
連れて行く前に、お母さんがこうしたことをいってしまい、結局治療しなければならなくなったときに、子供はだまされたという気持ちになります。
・不意打ちで連れて行かない。
子供が行きたがらないことを心配して、何の説明もなしに突然連れて行くと、子供は心の準備ができていないので、必要以上に歯科医を怖がるようになります。
・子供の機嫌のよい時間帯を選んで予約する。
3歳くらいのお子さんなら昼寝の時間帯をさけて午前中に連れて行く、空腹時はさけるなどの配慮が必要です。子供の日頃の生活ペースを考えて予約を入れ、時間に余裕を持って出かけましょう。
3.歯科医院では
どんなに説明をしても、やはり当日になると歯科医院に行くのを怖がる子供は多いものです。そんなときは、かわいそうだからといって治療を先のばしにしないで、必要なものは必要であるということを示すため、毅然とした態度で連れて行きましょう。また、お母さんの心配や緊張は、すぐに子供に伝染します。歯科医院に着いたらお母さんはあくまでもリラックスしてください。歯の治療なんて全然平気だよという雰囲気で、ゆったり構えることが子供の緊張を和らげるのにも役立ちます。このときのお母さんの心得として、次のことがあげられます。
・当日はママがリラックスすること。
歯科医院に着いたら、お母さんはあくまでもニコニコとしてゆったりと構えること。子供と一緒になって緊張していては、子供がさらに怖がることにつながります。
・かわいそうだからと途中で連れて帰らない。
中には診療台に座るなり、大声で泣いたり暴れたりする子もいます。かわいそうだと思って途中で連れて帰ると、治療ができないばかりか、子供に嫌なことは泣けばすむという意識を与えることになってしまいます。
・「痛くなかった?」は禁句です。
治療後子供につい、「痛くなかった?」と声をかけてしまいがちです。痛くなかった?は痛いと同じ意味。治療中は我慢できたのに、これで泣き出してしまう子供もいます。
・治療ができたらきちんとほめてあげましょう。
我慢して治療ができたら、すぐにほめることが大切です。「すごいね」、「お母さんびっくりしちゃったよ」などと、子供の自意識に訴えかける言葉をかけてあげましょう。
4.治療後は
治療後家に帰ったら、お母さんだけでなく、家族中でほめることが大切です。子供の見えないところでお父さんと打ち合わせをして、とにかくお父さんにほめてもらいましょう。遠くに住んでいるおじいちゃんやおばあちゃんにも電話で報告をしましょう。こうしたことが子供の自信につながり、治療に対する意欲がわくだけでなく、子供の精神的成長にもつながります。治療ができなかった子にも怒ったり、だめな子などとは決して言わないで下さい。次回に向けて次のような方法で親子で練習をしましょう。
・パパも巻き込んでとにかくほめる。
お父さんにも、お母さんと同じように「すごいな」、「がんばったな」などとちょっと大げさなくらいに驚いてもらいます。すると、子供に少しずつ自信がついていきます。
・次回の予定を必ず教える。
一度できたからといって安心してしまわないで。次回の予約の日も、きちんと教えてあげて下さい。カレンダーなどにシールを貼って、子供がすぐにわかるようにしてあげるのもよいでしょう。
・治療のできなかった子は練習してみましょう。
診療台に座れなかった、泣き叫んで治療ができなかったなどの子供は、歯医者さんの雰囲気に慣れるように、家で少し練習をするとよいでしょう。まずはお母さんの膝にコロンと横になる練習から。横になれたら3つ数えてから、ほめて起こしてあげます。だんだんと数を増やして60までできるようになったら、その姿勢でアーンと口を開ける練習をしてみましょう。
・虫歯ができたのは誰のせい?
はっきりいって、子供の虫歯は子供の責任ではありません。虫歯ができるのは歯ブラシの不足や、甘いものの食べ過ぎなど、生活習慣によって決まります。子供が虫歯になったのは、子供と一緒な時間を長く過ごす人(多くはお母さん)の責任であるといえます。子供が大変な思いをして治療を受けても、生活習慣が同じであれば、また虫歯はできます。子供の治療後はもう虫歯を作らないよう、お母さんが生活習慣の改善を考えましょう。
次回は「自費診療と保険診療について」でも書こうかな。
保険と自費の違いについて~その1 保険と自費の違いとは?
普通患者さんは医科・歯科を問わず受診された際、すべての治療に保険が利くと思っている方が少なくありません。歯科を受診された際に歯科医師から、「保険にしますか、自費にしますか」と聞かれ、とまどった経験をお持ちの人も多いことでしょう。 医科の場合、比較的新しい治療法や薬剤は積極的に保険診療に導入されていきますが、歯科の場合はあまりそういうことはありません。
歯科には保険診療を受けるか、保険を使わない自由な診療(自費)を受けるかという、全く異なる2種類の診療があると考えてよいでしょう。主な自費診療には次のようなものがあります。
・病気のない人の検査や予防処置(フッ素塗布、PMTC、虫歯菌・歯周病菌の検査など)
・歯列矯正治療(唇顎口蓋裂を除く)
・貴金属のクラウン、ブリッジ
・セラミックのクラウン、ブリッジ
・金属を多く使用した義歯(金属床義歯)
・インプラント(人工歯根)
・美容的な治療(ヤニ取り、ブリーチングなど)
・仕事上で生じた歯の病気やけが(労災保険が適用されます)
・けんか、交通事故などで生じた歯の病気やけが
これらをみると、高額の治療が多いことにお気づきだと思います。では保険と自費の違いはその用いる材料なのでしょうか。あるいは治療方法の質の違いなのでしょうか。答えはそのどちらでもありません。保険と自費の違いをひとことで正しく言うならば、「契約の違い」なのです。ですから保険の材料を使用して自由診療を受けることもできますし(実際そのような歯科医院は多くあるようです)、また逆に保険で認められていない材料や方法を保険診療の枠内で行ったとする歯科医院もあってよいことになります(こちらは実際にはほとんどないと思いますが、、、)。
このような話をすると、今まで歯科医院で保険と自費の違いをその材料や治療の質と説明を受けられた方は混乱するかもしれません。保険で冠を被せる場合、保険の種類によってその負担金は異なりますがおおむね5千円~1万円くらいの金額です。これが自費の貴金属の冠となった場合、もちろん歯科医院によりけりですが5~10万円くらいになります。保険で認められている金属かどうかだけの違いで、その金額が10倍にも変わるということがあるのでしょうか。これらのことを理解するためには、まず保険診療とはどういうものなのかを正しく理解する必要があるのではないでしょうか。
保険と自費の違いについて~その2保険診療の問題点につづく!
保険と自費の違いについて~その2 保険診療の問題点
1.日本の健康保険制度の仕組み~「現物給付」と「出来高払い」
今回は現在の保険診療の問題点について詳しくお話しします。まず、生命保険や火災保険といった、いわゆる「保険」を思い浮かべて下さい。これらの保険は、通常保険契約者と保険会社が契約を結び、その契約額に応じて月々の保険料を保険会社に支払い、何らかの災害を受けたときあるいは保険が満期になったときに、その契約に応じた保険金を契約者が受け取れる仕組みになっています。
それでは日本の健康保険制度はどうなのでしょうか。日本はご存知のように「国民皆保険制度」をとっていますので、原則としてすべての国民が「社会保険」か「国民健康保険」に加入しています(被保険者といいます)。そして保険の種類を問わず、その収入などに応じて被保険者は保険組合や自治体(保険者)に保険料を納めます。 そして被保険者が病気になったとき、受け取るのは「保険金」ではなく「医療そのもの」なのです。これが「現物給付」といわれている健康保険の特質です。医療を給付するのは医師ですから、「保険者」は医師でなくてはなりません。ところが現実問題として医師が医療行為と同時に医療事務を行うのは不可能であるため、保険者は医師を雇い入れ病院や診療所を作り、そこで被保険者の診療に従事させるという形態をとります。「社会保険○○病院」とか、「○○共済組合病院」といった名称の病院はいずれもこのような趣旨で作られ、そして現在の健康保険制度に最も合致した診療形態でもあるのです。しかし、この方法ですべての被保険者に医療を給付するのも現実的ではありません。そこで、保険者は全国で自由に診療している医師と契約を結び、自分の代わりに保険者に医療を給付してくれるよう依頼するという方法をとることになります。この依頼を受けた医師を「保険医」と呼びます。保険医は被保険者に医療という「現物」を「給付」し、その対価として保険者から「代金」を受け取るのです(一部負担金という形で被保険者からも受け取ります)。これが「出来高払い」といわれている健康保険のもう一つの特質なのです。病気や医療には様々な種類がありますから、それらを規定する「料金表」あるいは「メニュー」といった性質のものを作らなければなりません。そしてこれらを作る機関が厚生労働省であり、その責任者が厚生労働大臣という訳です。こうしてできあがった「メニュー」が、いわゆる「健康保険の枠」であり、前回ご説明した自費治療の一部はこうした枠からはずれているものなのです。「枠」は別の意味で「制限」といえます。後述しますが、日本の健康保険制度の大きな柱である「現物給付」と「出来高払い」が、実は治療に大きな制限を作り、その結果本来あるべき医療の姿が歪曲されているといえなくもないのです。
2.「現物給付」の問題点
日本の健康保険制度が現物給付が基本となっており、厚生労働省がその「メニュー」を作製していることは先程述べました。ここで問題となるのは、その「メニュー」を作る際の基準でしょう。その時代の先端を行く高度な知識や技術に裏打ちされた医療行為は常にこの枠内には入らないし、単に経済的な理由で枠からはずれる行為や薬剤もあります(特に最近は医療費の抑制を政府は目指していますから)。
ここで先程の「保険者」、「被保険者」、「保険医」の3者の関係を思い出してください。「保険者」と「被保険者」は契約を結び、同じく「保険者」と「保険医」も契約を結んでいます。ところが、「被保険者」と「保険医」との間にはそのような契約はなく、そこにはただ単に「医師」と「患者」の関係が存在するだけです。患者が同意するなら、医師は保険の「枠」にとらわれることなく、ベストを尽くして治療に当たるのは当然の責務といえます。患者のことを第一に考え、誠実に診療に従事している医師の診療行為が、しばしば保険外となってしまうのはある程度やむを得ないのではないでしょうか。「安くもない保険料を毎月納めてるのに、保険が利かない治療があるなんてけしからん」という患者さんの不満もわからなくはないのですが、「現物給付」という形での健康保険制度は、本来そうならざるを得ないということなのです。
3.「出来高払い」の問題点
それでは「出来高払い」にはどのような問題点があるのでしょうか。「現物」を「給付」したその対価として(すなわち医療行為を行うと)代金を受け取るのが出来高払いであると前に述べましたが、その医療行為の質や効果については全く関係なく、実際に何がどれだけ行われたかということで支払われるものなのです(これも後述しますが行われた行為についての審査はきちんと行われます)。医療費の額がこのような方法で決められるとなると、医療の「値段」は医療の「質」とは全く関係がなくなってしまいます。
一つ例をあげましょう。虫歯の患者さんが来院されたとします。麻酔をして削ってみたところ、神経を取るかどうかの瀬戸際だったので、高ぶった神経を静める薬を歯に詰めて経過を見たところ何とか神経を取らないで残すことに成功しました。このような行為は後で痛みが出る場合がありますので、それを嫌う歯科医師ははじめから神経を取ってしまうこともあります。当HPでも説明しているとおり、むやみに神経を取ることはかえってその歯自体の寿命を縮めるものですから、慎重に行う必要があるのではないでしょうか。ところが前者の行為(保険用語で覆罩=ふくとうといいます)は保険点数にして25点(250円)、一方後者の行為(同じく抜髄といいます)は根の本数によって違いますが210~500点(2100~5000円)という信じられないほどの点数の開きなのです(この保険点数は平成14年1月現在のものです)。
また、同じ神経を取る行為を有能な歯科医師が誠実に取り組んだ場合でも、逆に能力のない歯科医師が不誠実に取り組んだ場合でも、健康保険ではその経済的評価は全く変わらないのです。健康保険の規則に反しない限りで、たとえ患者のためにならなくてもどんどん検査をし、薬を出し、いろいろな処置をすると医師の収入は増えるような仕組みになっているのです(実際、最近の医科では無駄な検査や投薬が問題となっており、これらが医療費を上げているばかりでなく、耐性菌を生み出したり、患者の抵抗力を奪ったりしているといわれています)。逆に保険で認められていても、不必要な検査や投薬や処置は一切行わないという方針で診療に従事していると、その医師の収入は低くなってしまいます。そんなわけで、健康保険が「出来高払い」を採用している限り、医療費の額をどんなに詳細に検討してみても、それを公正かつ適正にするには非常に困難であるといえるでしょう。
参考図書 「歯の治療費に不満ですか?」 飯塚哲夫著 クインテッセンス出版
「良い歯医者と治療がわかる本」 秋元秀俊著 法研
このように現行保険制度には様々な問題があります。ここで紹介したものの他にも保険の規則の問題、予防行為を認めていないこと、さらに保険と自費に対する厚生労働省の見解などですが、私も少しアツクなってしまいましたので、これらのことは次の次にでも書かせていただき、次回はもうそろそろ確定申告の時期なので、医療費の控除のことでも書こうかなと思ってます。
医療費の控除について
日本全国確定申告の時期がやって参りました。そこで今回は医療費控除のお話を一つ、、、。
1.医療費控除とは?
医療費控除はあなたやあなたと生計を一にする配偶者その他の親族のために、その年中(1月1日から12月31日まで)に支払った医療費がある場合に、次の計算式によって計算した金額をその年の所得から差し引くことができる制度です。支払った税金が戻ってきますので、どしどし利用しましょう!
(その年中に支払った医療費)-(保険などの入金額)-(10万円または所得の5%どちらか少ない方)=医療費控除額(最高200万円まで)
ポイントは次のようになります。
・生計が一であれば扶養は問わない
・親族の範囲は六親等内の血族、三親等内の姻族
・未払いはだめ(当たり前です!)
・健康保険法の規定による高額療養費、出産育児一時金などや生命保険契約などの給付金は控除するが、傷病手当金や出産手当金は差し引かなくて良い
・所得が低い場合は10万円以下でも医療費控除が受けられる場合がある
・医療費控除は勤務先での年末調整は行えないため、確定申告が必要
2.控除の対象となるもの・ならないもの
医療費控除の対象となるものには、次のようなものがあります。2000年から施行された介護保険の一部も対象となります。
・医師、歯科医師による診療や治療
・治療、療養のための医薬品の購入
・病院、診療所や介護老人保健施設、指定介護老人福祉施設、助産所に収容されるための費用(交通費のことです、マイカーのガソリン代や駐車料金はだめ)
・治療のためのあんま、マッサージ、指圧、針、灸、柔道整復師らによる施術
・保健婦、看護婦らによる療養上の世話
・助産婦による分娩介助
・介護保険制度の下での指定介護老人福祉施設(施設費および食費)の支払額の2分の1相当
・介護保険制度下の一定の居宅サービスの自己負担分
・通院費用、入院の部屋代や食費、治療用の医療用具の購入費で通常必要なもの
・義手、義足、松葉杖、義歯の費用
また、対象とならないものには次のようなものがあります。
・美容目的の手術
・健康増進や予防が目的の医薬品購入
・人間ドックなどの検診費用
・親族に支払う療養上の世話の費用
・直接治療に必要のない近視や遠視のめがね、補聴器
3.領収書はマメに保管しよう!
医療費控除を受ける場合、医療費の領収書を確定申告書に添付するか、確定申告書を提出する際に提示しなければならないので、医療費の領収書は大切に保管することが必要です。なお、やむを得ない理由により、どうしても領収書が入手できない場合は、治療を受けたものの氏名、支払い年月日、支払先、支払金額などの明細を、たとえば家計簿の記録などによって税務署に対して説明し、納得してもらうことが必要になってきます。また、通院や入院時の交通費も医療費控除の対象となりますので、その都度電車などに乗った日時や経路、運賃をメモしておきましょう。
また、還付申告は翌年から5年間可能なので、申告し忘れてても大丈夫です。ただし、2年分以上を合算することはできません。各年ごとに10万円を超えていなければならず、申告書も別個に必要になるということを頭に入れておいてください。
4.年収別にみる医療費控除による還付金の目安
所得税が年収別で異なるように、医療費控除の還付金も当然異なってきます。下の表を目安にしてください。縦軸が年収、横軸が医療費控除額になります。
| 20万円 |
50万円 | 100万円 | 150万円 | 200万円 | |
| ~300万円 | 0~1万 | 0~4万 | 0~5万 | 0~5万 | 0~5万 |
| ~400万円 | 1万 |
4万 |
9万 |
12万 | 12万 |
| ~660万円 | 1万 |
4万 |
9万 |
14万 |
19万 |
| ~1200万 | 2万 |
8万 |
18万 | 24万 |
38万 |
| ~2200万 | 3万 |
12万 |
27万 | 42万 |
57万 |
いかがですか?医療費控除についておわかりいただけましたでしょうか。確定申告の時期は毎年2月16日から3月15日までです。まだお済みでない方は、お早めに申告してください。次回は「保険と自費の違い」の続きを書こうと思ってます。
保険診療の基準とは?
その3 保険診療の基準とは?
今まで2回にわたり保険と自費の違いについて書いてきました。今回は保険診療の基準について詳しく述べたいと思います。
1.保険診療の基準はどこにある?
日本の現行保険制度の基本は「現物給付」と「出来高払い」であると、「その2」の中で述べました。つまり、患者さんがどこか具合の悪いところがあった場合、保険証を持参して保険医療機関へ行き、そこで「医療」という現物を給付してもらい、そのかわりに保険医療機関は行った処置に応じて報酬を受け取るということです。
では、保険診療ならば何をやっても良いのでしょうか。当然そんなことは許されることではなく、そこに基準が存在します。多くの人は、ほとんどの人が保険診療を受診しているのだからその基準は歯科医学上適切なものである、と想像するでしょう。ところが残念なことに、保険診療の基準は歯科医学に基づいたものではなく、むしろ保険の決まりに基づいたものであるのです。患者の治療は、保険の収入を得るための決まりを基準に進められているのです。その決まり(約束事と言い換えても良いでしょう)も、元々は歯科医が作っていますから、歯科医学を大きく無視したものではありませんが、いかんせん古くなっており、現代の歯科医学にはマッチしておりません。また、はじめから甚だおかしい決まりも数多くあります。歯科医がこれらの決まりを無視すれば何の問題もないのでしょうが、そういうわけにはいかず、多くの場合患者の口の中の診断よりこの種の決まりに振り回されてしまう傾向にあるのです。
2.保険診療の監督者は誰?
保険診療が行われた場合、それが正しく約束事にのっとっているかどうかの監督者が存在します(そうでないと何をやっても良いことになってしまいますから)。約束事の細かいことは専門家でないとわからないので、その監督者(審査員といいます)も厚生労働省の管轄のもと、医者や歯医者が行っています。このように書くと、一般の人々は、お手盛りの審査になるだろうと想像しても不思議ではありません。しかし、実態はそうではありません。保険診療の審査員は、同僚の医者・歯医者に対して時に非常に厳しく警察官にも裁判官にもなるのです。そのため我々歯医者は、患者さんをどう治すかより「これは保険で認められるか、そうでないか」を常に考え、神経をとがらせるのです。逆にいえば、保険の約束事を守っている限り、歯科医学的に正しくない処置でも保険診療として認められるということです。
保険診療の最大の問題は材料が粗悪なことではありません。報酬が少ないために処置が粗雑になることでも、見かけの良い処置ができないことでもありません。現物給付と出来高払いにより、患者さんの生涯の健康に対する医療人としての倫理観が失われやすいということが最大の問題なのです。
3.健康保険は疾病保険?
現行保険制度にはもう一つの大きな問題があります。前にも述べましたが、予防行為がほとんど認められていない、という点です。私が歯医者になって十数年が経ち、その間数多くの患者さんのお口の中を診てきましたが、これだけはいえるということは「歯科医療は予防第一である!」ということです。虫歯でいえば、あいた穴を埋めることよりも、虫歯ができた原因を除去しそのリスクをコントロールすることの方が重要だし、歯周病でいえばプラークコントロールが非常に重要であり、悪くなった歯茎の手術等はそれに付随するべき処置なのです。しかしながら、現行保険制度ではこれらの予防行為が取り入れられてないか、あるいは非常に低い評価にとどまっています。
具体例を挙げましょう。虫歯のリスクをコントロールするにはその患者さんのどこに原因があるのか調べなければいけませんが、そのようなリスク検査は現在のところ(平成14年4月)保険外診療となっています。歯周病の原因菌の特定検査についても同様です。プラークコントロールに関しては保険で認められていますが、1ヶ月に1回、15分以上行った場合(15分でも5時間でも同じ評価です)に800円となっています。歯石の除去についても保険で認められていますが、1本の歯につき平均600円です。熟練した歯科衛生士が完全に歯石を取るのに1時間に1~2本しか取れない場合もあり、そのような場合は明らかに経済的評価が低いと思われます。「真面目にやるだけ損」と考える歯医者がいても全く不思議ではない状況なのです。定期検診も歯科では非常に重要と考えられていますが、これについても今年4月の保険改正で初めて認められ、しかもかなりの条件付きなのです。
このように現行の保険診療では疾病の予防をすることはままならず、むしろ悪くなるのを待って治療をして、またさらに悪くなったら治療をするという診療方法を助長する傾向を持っているのです。これでは健康保険とは名ばかりで、その実態は疾病保険と揶揄されても仕方ありません。100人の健康な口を守ることよりも、一人のひどい虫歯により多くの医療費がかかってしまうという矛盾を、国はどう考えているのでしょうか。
今回でこの項は終わりにしようと思ったのですが、無理でした(ちょっと疲れました!)。続きはまた次回に、、、。
保険と自費の違いについて~その4 歯の治療は「医療」か?
6.保険と自費の違いについて~その4 歯の治療は「医療」か?
1.厚生労働省の見解
さて、前回まで現行保険制度の問題点を明らかにしてまいりましたが、その大親分である厚生労働省は保険制度をどのように捉えているのでしょうか。
現物給付という保険医療の本質を考えると、すべての医療行為が保険の枠内に収まることはないということは今まで述べたとおりですが、厚生労働省は以前から次のようにいっています。「通常必要な歯科診療は、すべて健康保険でまかなえる 」と。なかなか微妙な言い回しではありませんか。裏を返せば、「通常必要でない歯科治療」は保険の枠外から逸脱するということを容認しているようにも思える表現です。では「通常必要でない歯科治療」とは何でしょうか?ある人には必要ではないが、別のある人には必要な診療という意味なのでしょうか?それならその行為はやはり「必要な歯科診療」ではないでしょうか。あるいは「通常必要でない歯科治療」が不必要なものであるならばわざわざいう必要もないわけですし、不必要な治療を容認しているというのであれば、あらゆる医療行政の総元締めである厚生労働省がそのような治療を取り締まらずに放任するかのような発言をするのもゆゆしき問題です。
おそらく、というより確実に、厚生労働省は歯の治療には健康保険でまかなえないものがかなりあると知っているでしょう。そして、そのことをはっきりと言えない理由と思われるものの一つに「国民皆保険制度」があります。現在の日本では、すべての国民は必ず健康保険に加入しなければならないことになっています。このような制度のもとで、安くもない保険料を毎月納めているにもかかわらず、「これは保険ではできない」、「それも保険の給付外の診療」などということになると、国民のほとんどは黙っていないと厚生労働省は想像するのではないでしょうか。
2.歯の治療は「医療」である!
また、厚生労働省は歯の治療を医療と考えていない節があります。それは、以前に次のような説明をしたところからも見て取れます。「家の造りにはプレハブもあれば鉄筋もある。今の世の中では鉄筋や総檜は贅沢だが、木造ならまあまあだ。歯の治療もこれと同じように、金や白金を使うのは自分のふところでまか なってもらい、通常の治療(木造)なら保険でできるはずです」と。
厚生労働省は「いい治療」と「まあまあの治療」があると考えているといっても良いでしょう。このような考え方自体はそんなに特殊ではありませんし、多くの患者さんやあるいは歯科医師までもがこのような考えを持っているようです。しかし、このような考え方自体が歯科医療の本質をどれだけ歪曲しているか計り知れないのです。
あらためていうまでもなく、歯の治療は「医療」です。たとえばあなたが盲腸の手術を受けるとき、手術前に医師に「うちの手術は松・竹・梅と3種類ありますが、どれにしますか?」と聞かれたらどう思うでしょうか。医師はいろいろある手術のうちから、適当に見つくろってやり方を決めるということはあり得ません。常に自分の能力の範囲内で、その症例に最良と思われる治療法を選択すべきであるし、その治療方法は保険の給付内外にかかわらず、ただ一つであるはずです。歯の治療にも同じ事がいえるのです。何が必要な治療か、何が患者のためになる診療かということを問わなければ、厚生労働省のいうことも間違いではないでしょう。しかし、ここで問題になるのは何がいい治療で、何が十分な治療かということなのです。このようなことは、当然歯科医学的見地から判断されるべきもので、保険の基準で決められるべきものではないのではないでしょうか。
小泉内閣は構造改革の名の下に、社会保険本人の負担率の増大(3割負担)、老人医療の窓口負担の増大、政府管掌健保の保険料増大など、保険医療改革も着々と進行させています。しかし、窓口負担の増大だけでは、現行保険制度の本質は何も変わらないのではないでしょうか。
